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ビバ!インクルージョン 私が療育・特別支援教育の伝道師にならなったワケ [参考図書]


ビバ! インクルージョン: わたしが療育・特別支援教育の伝道師にならなかったワケ





柴田靖子 著    現代書館 発行

著者は、水頭症の二人のお子さんを持つお母さん。
二人の子どもたちは、どちらも、自力で立てず、移動できず、手指が不自由で、視力も弱く、言葉を発して意思を伝えることができないのは同じだが、お姉ちゃんは特別支援学校に入学し、弟くんは地元の普通の小学校に入った。
お姉ちゃんの特別支援学校での体験から、療育や特別支援教育に疑問を持ったこと、本当の意味でのインクルーシブ教育がどんなものかということを教えてくれていると思う。

一般企業で障害者雇用業務に就いている時代には、ある程度、障害者に関わる法律も知っているつもりだったけど、仕事から離れている10年ほどの間に、法律はどんどん変わっていて、大学院で障害科学を学び始めてから、その変化に少なからず驚いたわけだが、その変わり方は、障害のある当事者にとって、望ましいものではない。

大学院で学び始めた当初に知って、これからどんどん良くなると期待を持ったのが、「インクルーシブ教育」で、障害のある人も無い人も、同じ環境で学び、一緒に生活できるようになるなんて、素晴らしいけど、きっと実現するまでには大変な困難があるんだろうと思った。

同時に、特別支援教育についても少しずつ勉強してきたが、この大学で教えてくれている特別支援教育のあり方は、とても納得できるもので、子ども一人ひとりに向き合って、できることとできないことを明確にし、できることを伸ばしてあげるし、言葉を発しない子どもにも、いろんなしぐさや視線や微妙な表情の変化で意思をくみ取る努力をするし、その意思を尊重するように努めるとか、こんな学校なら、きっと、どんな子どもも自分の能力を最大限に生かせるようになるんだろうなあと考えていた。

でも、この本の著者が出会った特別支援教育は、全く違っていた。
できないことをできるようにする訓練、できるようにはならないのに、子どもに苦痛を与えるだけの訓練や、子どもたちの意思を無視した生活、意思を持たないようにさせるための場所が、特別支援学校のようだった。

私が大学で学んでいることは、ある意味、理想であり、幻想であって、現実は違ったものなんだろうと思う。

一方、一緒に保育園で育った友だちと同じ小学校に上がった弟くんが体験したことは、まるで違っていたわけで、その小学校は「万人のための学校」に成長できそうだという。
弟くんを取り巻く人たちも、日々、経験し、学び、障害のある人たちと場を共有することができるようになっているのだろう。

障害者とそうでない人たちが、分けられているから、出会う機会がないから、話したり一緒に過ごしたりする機会がないから、なかなか理解し合うことができないんだと思う。
であれば、分けずに、一緒に過ごすことが、一番大切なことだろう。

それが実現できるなら、これからのインクルーシブ教育にはとても期待が持てる。
そのためには、まず、現場の先生たちに、もっと知ってほしいことや学んでほしいことがあるから、そうそう簡単にはいかないのだと思うが。

二人のお子さんを別々の学校に入学させたことで、いろいろな違いが分かったことや、様々な体験とその折々の気持ちを、このような本に記してくれたことは、大変な感謝である。

できれば、より多くの人に、この本を読んでいただきたいものである。


ビバ! インクルージョン: わたしが療育・特別支援教育の伝道師にならなかったワケ


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地域及び施設で生活する高齢知的・発達障害者の実態把握及びニーズ把握と支援マニュアル作成 [発達障害]

研究代表者 遠藤 浩

厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業 平成26年度 総括・分担研究報告書

平成27(2015)年3月


平成12年に旧厚生省において「知的障害者の高齢化対応検討会」が開催された頃から、高齢知的障害者の支援について興味関心が高まりはじめた。

しかし、検討会では知的障害者の高齢化に向けての指針が示されただけで、その後現在に至るまで、高齢知的障害者の実態ならびにサービス利用、さらには必要とする支援方法や医療的ケア等に関する包括的な調査研究は実施されていない。

高齢化に伴う健康管理や身体的介護・医療的ケアは、若年期・壮年期を中心とした知的障害者の支援方法と大きく異なると予測される。



◎知的障害のない高齢期発達障害者の実態調査

回答のあった77か所の発達障害者支援センターにおける平成25年度内の相談支援・発達支援、及び相談支援・就労支援の実支援人員総数は、56,476人

そのうち50歳以上で確定診断を受けている発達障害者は、84人
確定診断は受けていないが、発達障害の疑いがある人は、59人

確定診断を受けている84人 (男55人、女29人)

診断名 
アスペルガー症候群  42人(50%)
広汎性発達障害  31人(37%)
ADHD  8人(9%)
自閉症  3人(4%)

35歳未満に診断を受けていた人  0人
35~49歳までに診断を受けた人  32人(38%)
50歳以降に診断を受けた人  51人(61%)
不明  1人

概ね壮年期以降に初めて診断を受けている。

そのうち、65歳以上で初めて診断を受けた人は、3人(男2人、女1人)
相談のきっかけ
配偶者からの勧め 2人
自ら発達障害の疑いを持って 1人


高齢期の知的障害のない発達障害者の事例は非常に少数
発達障害支援センターの全相談件数の0.1%

【調査報告書】

2012年には文部科学省調査により、通常の学級に発達障害の可能性のある特別な教育支援を必要とする児童生徒が約6.5%程度の割合で在籍する可能性が示されている(文部科学省,2012)。

しかし、壮年期以降、特に高齢期については、ホームレス支援事業所利用者の内、高齢期の知的障害がない発達障害者が1.4%の割合で利用していた(橋本,2014)調査結果を除き、その実態把握さえなされていないのが現状である。

◎相談のきっかけ

本人 70人(49%)
家族 37人(26%)
その他 職場の人 


◎電話での聞き取り調査結果

娘が母親を連れてきたケースが2件
すぐに感情的になる、攻撃する、叩く、叩いたことを気にかけ自傷する、文字が書けないなど
本人自身には困り感はないが、家族が困っている。

自身で疑いを持って相談に訪れたケース1件
定年まで会社で仕事をしていた。配偶者あり。50歳代で近所の精神科を受診、診断を受ける。
警察とトラブルになっており、自分の状態(発達障害の特性など)をわかってもらえない。
同行して説明してほしい。
⇒同行して説明することで解決し、以後の相談はない。


2013年度に支援センターを利用した50歳以上の発達障害者(疑いがあるものを含む)143人の内、約7割以上の人の生計は「本人の賃金収入」「家族の収入」「年金」であり、障害福祉サービスの対象者は極めてまれである。

本人や家族に何らかの困り感があるものの、職業を持ち、家庭を築き、一般の社会生活を送っているのではないかと想定された。


-------


本人がきっかけで相談に訪れている人が多いということは、本人の困り感が一番多いのか?
家族もたいがい困っているのだろう。
職場の人、というのもありなのか?
どういうふうに伝えたのだろう。

それでも、発達障害者が若い人たちよりも少ないというのは、それまでの人生をそのままに生きてこられたから、普通に生活を送っているから、今更相談しなくても大丈夫、と思っているからだろうか。

困り感がない人たちには、余計な支援は必要ないと思うが、ホームレスの人たちの中に一定以上の発達障害者がいるのだとしたら、きちんと調査して、支援の手を差し伸べることが急務だろう。


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地域で孤立する成人を支援の場にどうつなげていくのか [発達障害]

萩原 拓 (北海道教育大学)

臨床心理学 第14巻第2号 2014年3月 203-207

・地域での孤立に至る経緯

大学の理系専攻によく見られる研究室での勉強や実験は、クラス単位制とは異なり、専門をテーマとする集団環境であるため、ASDのある人々にとっては過ごしやすい環境であることが多い。

学校を卒業すると、就労などの場合を除き、集団を形成する枠はほとんど目に見えなくなる。

適応スキルレベルの低い発達障害のある成人たちにとっては、安心して過ごせる「居場所」は、地域社会ではなかなか見いだせない。

・地域の福祉サービスによるつながりのイニシアティブ

全国の発達障害の支援機関は、特別支援教育の発足をきっかけに教育・福祉双方において拡大及び充実してきている。

発達障害支援センターや就労訓練期間、NPOサポート機関など、多種の支援機関が存在している一方で、具体的に一貫した地域サービスが確立していないのが現状である。

成人の当事者の多くが青年期以降で診断を受けている現在、大人になってから初めて支援機関を必要とする場合、まずどこに行ったらいいのか戸惑ってしまう。

診断を受けてはいないが自身の発達障害特性に加えて、社会不適応によるこれまでの人生のネガティブ体験などの蓄積により、精神疾患に至らなくても無気力やひきこもりなどの現状に至ってしまっている人々のサポートをする支援機関の存在が地域において明確になっていないことも大きな課題である。


発達障害のある成人を支援につなげる道筋は、現在、青写真のない、または未完成の状態である。

支援サービスの充実が地域において顕在化することは、彼らを支援へとつなぐ最短の道筋ではないだろうか。


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自己肯定感をなくしている当事者にとって、相談窓口の連絡先を探すのも、一苦労だと思うし、たいがいは電話をかけて相談の予約することを求められているけど、電話を掛けるのもハードルが高いのではないかしらん。
で、勇気を振り絞って電話をして、事務的な対応だったり、予約が取れるのが何か月も先だったり、その予約の電話を掛けるにも数週間後の時期を待たなくちゃならなかったりしたら、もう、次に電話する勇気はなくなると思う。

電話じゃない方法で、簡単に、すぐに予約が取れるようになればいいと思うんだけど。

Webサイトも、もう少し、見つけやすい方がいい。

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働く発達障害者を支える [発達障害]

廣 尚典 (産業医科大学産業生態科学研究所精神保健学)
永田 昌子 (産業医科大学産業医実務研修センター)

ストレス科学 2015,30,35-38

成人の発達障害、その中でも特に知的障害を伴わない例が注目を集めており、産業保健の領域においても、それに該当する労働者への支援の在り方が議論されるようになってきた。

就労後にその特性が職場内で顕在化したり、専門機関の受診を促され診断に至る例が少なくない。

抑うつ症状の再燃・再発により休業を繰り返す例の一部に、発達障害の特徴が見出されることが報告されている。

・指示命令が伝わりにくい
・言動が軽率
・不注意によるミス
・場の雰囲気がつかめない臨機応変の対応が困難
・常識が欠けている
・本質的でないところへのこだわりが強い
・協調性が乏しい

上司の視点

・業務内容の指示や進捗管理に手間がかかる
・他の部下や同僚の不満が高まる
・当該労働者が引き起こした業務上トラブルの処理に時間が取られる

特性上苦痛を強く感じる職場環境下で業務を継続することにより、あるいは、苦手とする職務を担当することにより、ストレスを高めて、他のメンタルヘルス不調を併発する可能性がある。

感覚過敏、聴覚などの選択的注意および自律神経系の脆弱性の問題、失認、協調運動に関する障害、社会性

職場において「発達障害」か否かをはっきりさせることは、
(本来は必要ではないが)
他の健康障害では当てはまらない特殊性の高い配慮が求められるため、診断名が示された方が対応を進めやすい。

ところが、状態像にあまり差異が見られない労働者間で、診断の有無によって、就業面の配慮がされたりされなかったりという事態が生じると、「診断がつけられた者勝ち」「つけられた者負け」といった雰囲気を生み、職場の士気、モラルに影響が及ぶことがある。

グレーゾーンの労働者は、就業上の困難を上司や産業保健従事者に臆することなく相談でき、適切ね対応が取られるという前提条件の下で、自らは該当することを申し出ずに就業を続けることができる仕組みが、支援の目指す方向としては妥当ではないかと考えられる。

------


実は発達障害なのに、うつ病などの二次障害を併発し、休職を繰り返して退職に至る労働者が多いと思う。
障害者差別禁止法の施行によって、支援が受けられるなら、多くの困難を抱える成人の発達障害者が、進んで診断を受けられた方がいい。

同僚などの理解の促進は、どうしたら進むのか。

本人にも、周囲の人にも、障害への受容が必要だと思う。



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発達障害への早期介入-横浜市における早期発見・支援体制と,保護者のメンタルヘルス支援の在り方について- [発達障害]

高木 一江 (横浜市中部地域療育センター)
本田 秀夫 (信州大学医学部付属病院子どものこころ診療部)

ストレス科学研究 2015.30.27-34

・H26年度の新規相談者について

申し込みから初診までの待機期間は、未就学児・学齢児ともに、2~4か月


・H26年度の横浜市地域療育センターにおける新規相談者数  4,509人

未就学児(0~3歳) 3,664人

少なくとも2歳ごろからの幼児期に発達障害を発見し、療育的支援を開始

・H26年度の療育センターにおける新規相談の紹介元

乳幼児健康診査でのスクリーニング
知的障害を伴わない発達障害、あるいはその疑いで地域療育センターを訪れる場合が、全利用者の半数以上を占める。
1歳6か月健診、3歳児健診による早期発見は、1,807人(全体の40%)
健診にあたるのは、非常勤心理士または、地域療育センターの多職種スタッフは、医師、心理士、福祉士など

保護者の認識がなかなか深まらず、療育センターにつながるまで数年かかる場合やつながらない場合もある。

幼稚園・保育所による早期発見への支援のため、延長や保育士など職員が気になる行動や、養育者が対応に難しさを感じる幼児について相談できる機会を設けている。
幼稚園・保育所と療育機関とが協働で母子を支援。

妊娠中~出産直後に医学的治療を要した乳幼児は、急性期治療後、あるいは退院後に、医療機関から療育センターに紹介される。

地域の診療所・病院の診療の際に気になる行動、子育てのしにくさを母親から相談された場合、地域療育センターに紹介。

・H26年度新規相談者の主診断

自閉症スペクトラム症 2,547名(未就園児2,067名、学齢児480名) 全体の58%。
語音詔・吃音 552名 12.7%
知的能力障害 250名 8.5%
言語症 146名 3.4%
注意欠如・多動 199名 4.6%
運動発達遅滞 113名 2.6%

それ以外は100名以下

ダウン症は、95名 2.2%
標準範囲と判断されたものは、30名 0.7%


・発達障害の早期介入と保護者に対する支援

保護者にとって、療育センターで専門医を受診するということは大変な決断であることが多い。

障害受容ができない。
家族の理解、協力が得られない。
慢性疲労、精神的不安定
育児不安

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横浜市では、医療、福祉、教育分野での連携ができていると読み取ってよいのか。
自閉症の症例の多さに驚く。
乳幼児健診のスクリーニングで、ほとんど把握できていると判断していいのか。
こぼれてしまっている子どもはいないのか?



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場面緘黙児の発話行動の般化を促進するための学校場面におけるフェーディング法の適用 [緘黙]


松村 茂治  行動療法研究,第18巻,第1号,47~69,平成4年 (1992)

2010/04~明治学院大学 心理学部 教育発達学科 教授
1979/04~2010/03  東京学芸大学 教育学部 教授
1973/04~1975/07東京教育大学大学院 教育学研究科

小学生女児の場面緘黙2事例にフェーディング法を中心とする行動療法的介入
特に、学校場面での介入

場面緘黙への介入効果を見定める観点は、
・発話以外の行動変化があるか
・治療場面での行動の般化があるか
・自発的な発語が現れているか

目的:場面緘黙児に対するフェーディング法を中心にした介入を計画的に進めることで“般化の困難性”を 克服するための方策を探ること

般化とは
  人や状況を超え、行動の広がりが確実なものになること。
  →行動変容法では、訓練場面以外の場面で、すべての関連する刺激のもとで標的行動が生起するようになること

会話を可能にしたい現場で介入することが必要。
発話のできなさを共感性、社会性の欠如などの社会的行動の未熟さの中に位置づけて対応していくことが必要。
緘黙症状が出現している場面での不安・緊張感の 軽減が必要。  
場面緘黙の問題形成に及ぼす家族の役割についての研究が必要。


どちらの事例も、担任教師および学校の協力を得ることに成功している。

事例2では、対象児の親友Y子への対応の仕方と、タコ踊りへの対応の仕方に、疑問。
[考察から]
ただし、介入の最終段階では、このY子の存在はややうっとうしいものになった。なぜなら、Y子に対する依頼心が強く、また彼女との相乗的な関係の中で、何度か指摘してきた”悪ふざけ”が出現するようになったからである。放課後の学校での介入や相談室での介入から、Y子をフェードアウトしようとしたことが何度かあったが、しかし対象児自身の抵抗に会いうまくいかなかった。

なぜ、悪ふざけするようになったのか、その時のきっかけは何か。
悪ふざけの意味は何だったのか。
セラピストへの攻撃的な言動は、親しみの現れだったのか。
単なる社会性のなさ、と、解釈するだけでよかったのか?


[現実脱感作 ]
恐怖症に適用する技法。患者は、最初にリラクゼーション法を習得する。次に不安をもたらす刺激について不安階層表を作る。最後に、恐怖反応の拮抗反応としてリラックス状態を維持したまま、不安階層表に従って、最も弱い現実の不安場面から順にその場面を体験する(レイモンド;2006)。

*系統的脱感作法:現実脱感作とほぼ同じ手続きだが、系統的脱感作は場面を体験せずに、イメージするのみ。そのため園田(1977)は知的能力の低い人や子どもにはイメージによる系統的感作は、不適当であるとしている。

・「ご褒美や罰を用意しても、お子さん自身の準備ができていなければ発話の促進には繋がらない」
(マクホルム他(2007)P78)

・「ご褒美で発話させようとプレッシャーをかけることも、お子さんが避けようとする場面の一つになりかねない」
(マクホルム他(2007)P78)

場面緘黙の問題は、社会的行動の発達と関連付けて考えるべき
他者に関心を寄せたり、他者の気持ちを考えて行動するなど、日々の家庭での生活にその基礎を持つ


他者に関心がなく、他者の気持ちが考えられないせいでの緘黙とするならば、緘黙の根っこにも、自閉症に似たものがあるのか?

社会的行動を身につけるには、どのような支援が効果的なのか?

両方の事例とも、父親が子ども時代に同じような緘黙様だったこと、現在もコミュニケーションが不得意なことは、子どもの緘黙にどのような関係があるのか。
遺伝的なものか、それとも、家庭で父親と接触が無いという環境からなのか。

場面緘黙の問題形成に及ぼす家族の役割について、その後の研究事例が知りたい。
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ぼくはアスペルガー症候群 [ASD関連図書]



ぼくはアスペルガー症候群  権田 真吾 (著)

2011年6月に出版された、当事者の体験談。
出版当時の年齢は42歳。
成人になってから、認知症を疑ったのをきっかけに、アスペルガーについて自分で調べ、大人を診てくれる専門医を探して受診したケース。
うつ病という二次障害も経験している。

当事者が書いてくれるものは、とても参考になる。
今まで、いろいろな当事者の体験談を読んだが、こ著者のタイプは、今まで読んだものとはまた少し変わっている。
自閉症スペクトラム障害とは、本当に多様で、一括りにはできないものだと思う。


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ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法 [ASD関連図書]



ぼくはアスペルガーなお医者さん 「発達障害」を改善した3つの方法

2015年11月13日 第1刷発行の新しい本で、著者は整形外科の医師でもある当事者。

ご自分の体験談を書いてくれている本なのかなあと思って読み始めたが、体験談は比較的さらっと書いてあるのみで、アスペルガーの紹介と対処法(お願い)が中心に思えた。

「自分の子どもは発達障害かも」と思い、発達障害について知りたいと思っているお母さんやお父さんにとっては、解かりやすく親切に書いてある本。
子どもが困った行動をしたときの考え方や対処方法を書いてくれているのは、いいと思う。

「発達障害」より「非定型発達」と呼んでほしいというのには、同意。

発達障害の分類や、脳の違い、神経伝達物質のことについて、イラスト入りで説明してくれているのは、初心者にもわかりやすいと思われる。
アスペルガーに向いている仕事、向いていない仕事について書いてくれているのは、子育て中の親にとっては、大いに参考になる。

アスペルガーを改善した方法については、研究段階とのことだが、もしかしたら、すごく参考になるのかも。
著者にとっては、とても効果があったらしいので、他の皆さんもやってみていただいて、効果があったのか、そうでもなかったのか、調べてみてくれるといいけど。

ただし、97~98ページの記述は疑問。
「自閉症の子どもは(中略)何らかの原因で、脳の機能に障害が生じて」と書かれてしまうと、妊娠中に何か悪いことをしたからだろうか?と、母親が自分自身を責めることになりかねないと心配する。
「自閉症は治らない病気ではありません」もちょっと。さんざん、「発達障害は、個性だ」と書いているのに、矛盾してしまう。自分に責任を感じた母親が、我が子の自閉症を治そうとして、無理をしてしまうのではないかと心配になる。

ASDの子どもは、できる所を伸ばしてあげて、何か一つ、人よりも優る能力を身につけさせてあげるのが、いいというのは、大いに賛成。
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発達の指標としての「心の理論」課題 ~実行機能の役割に焦点を当てて~ [心の理論]

愛知教区大学研究報告書,56(教育科学編),pp,87~94,March,2007

竹内謙彰 学校教育講座(心理学)

心の理解の発達において実行機能がどのような役割を果たしているかに関し、近年の実証研究の成果を踏まえ、発達上の説明について整理を行おうとする試み。

著者は、立命館大学応用人間科学研究科教授 竹内謙彰(発達心理学、自閉症スペクトラム障害児・者の特別なニーズと支援)。愛知教育大学研究報告(教育科学編)2007年3月に掲載。
近年の実証研究の成果を踏まえ、発達上の説明について考え方を整理したもの。引用文献は38件、そのうち日本人によるものは9件。本文は、大きく2つの論点に纏められている。
(1) 「心の理論」課題は発達の指標たりうるか
(ア) 「心の理解」と「心の理論」…「心の理解」は欲求・感情の理解の獲得が先であることが報告されているが、「心の理論」は「誤信念の理解」に焦点を当てているものに偏っている。
(イ) 誤信念課題は心の理解の発達を見るのに適した課題か…誤信念課題の代表は、マクシ課題とスマーティ課題。これらは発達の指標として適切か否かの検討をする。
A) 課題通過時期の問題…カナダ、インド、ペルー、タイ、サモアなど、比較文化的研究でも、誤信念課題の解決率は5歳児で平均正答率85%となり、発達の指標として使用しうる。
B) 自閉性障害との関連…健常児が直感で誤信念課題を解決するのに比べ、自閉症児は直感ではなく、言語論理的理に問題を解決し、「心の理論」を形成している。
C) 誤信念課題は発達の指標たりうるか…健常児と自閉症児とは、異なる方略によって解決可能であり、自閉症の鑑別診断では有用ではないが、発達の大まかな指標としては有用。
(2) 「心の理解」の発達と実行機能の関わり
(ア) 「心の理解」の発達についての説明…実行機能は、プランニング、抑制制御、自己調整、認知的柔軟性などを含む。心の理解の発達に対する実行機能の関与は、明確ではない。
(イ) 関連を示唆する実証研究…実行機能と心の理論の関連を示した研究3件、実行機能が心の理論に先行するという研究3件、関連を疑問視する研究を3件紹介している。
(ウ) 両者はどのように関連しているのか…実行機能と心の理論の獲得の間に何らかの関連があることは間違いないが、抑制制御、認知的柔軟性、プランニングなどのどれが重要なのかは、さらにデータの蓄積が求められる。
 以上を踏まえ、筆者は、心の理解の発達にとって実行機能だけが重要な役割を持つのではないと考え、実行機能は思考や行動を調節する機能を持つが、心的な内容自体を作り出す働きを持たず、誤信念課題で測定される一定にまとまりをもった心的プロセスを、要素に分解するアプローチでは、「心の理解」の本質を見誤るのではないかと考察している。
 さらに、「心の理論」課題と呼ばれる誤信念課題は、そのメカニズムが十分解明されてはいないが、発達の指標としては一定の役割を果たしうると結論付け、「心の理論」課題と現実の子どもの発達的特徴がどのように関わりがあるのか、もっと研究がなされるべきであると述べている。

 「心の理論」というものの存在を知ったとき、自閉症診断において万能なのではないかと心躍るものがあったが、海外に比べて日本での研究事例が少なく、文献を探してもあまり見つけることができなかった。しかもその多くが医学的研究によるものであり、教育心理学や特別支援教育分野での研究は数えるほどしか見つからなかった。
このレビュー論文を読むことで、「心の理論」を肯定する論文がある一方、反対または疑問視する論文もあり、「心の理論」がまだまだ課題の多い理論であると知ると同時に、自閉症そのものも、まだまだ解明されていないことが多いことを知った。「心の理論」は「誇大広告」だったのか、著者のいうように、現実の子どもの研究が(特に日本国内で)多く報告されることが期待される。

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論文ゼミナール [参考図書]

著者:佐々木健一
発行:東京大学出版会

会社勤務のころ、たくさん文章を書いたし、若い社員達の研修員論文やレポートの添削などをやってきたので、文章はそこそこ書けると思っていたけど、大学院で出会う文章は、まるで違って、戸惑うことが多かった。
まず、論文のための文章は、どう書けばいいのか、基本から学ぶ必要を感じたので、この本を見つけて読んでみることにした。

始めて論文を書こうとしている人たちと大学で論文を指導する教師のための教科書として書かれたとのことだが、読み物としても楽しめる本。
ただし、手っ取り早く論文の書き方が知りたいという場合には、向かないかな?
「論文とは何ぞや」から始まって、論文の設計、モラル、文章法、見直しと推敲、書式など、多岐にわたって記述されている。

論文ゼミナール論文ゼミナール.jpg


文献を読んでいくときに要約を記録しながら読むというのは、正しい。
記録の仕方には、ノート、カード、データベースという方法がある。
ノートは要約するのに適している。
カードは、要約を基本としつつ、重要個所をそのまま書き写す。
カードをノート風に使うことは意味をなさないが、ノートをカード風に使うことは可能。
データベースは、テキストの抜く書きを電子ファイルで保存する方法だが、インターネット上に電子ファイルが提供されている昨今では、個人のデータベースは意味をなさない。

私がこうやってブログにしようと思ったのは、あとからキーワードで文献を見つけやすいのではないかと思ったから。
文献で気になる箇所の抜き書きを、自分の感想とともに記録しているので、カード型に近いのではないかと思う。
あながち、文献の読み方としては、間違っていないのではないだろうか。

ディドロの論文執筆法
「符牒となる単語」をどんどん書きだしていく。
順序なく、慌ただしく、思いつくままに書きつける。
頭が空っぽになったら、しばらく時間をおいて、もう一度同じ作業を繰り返す。
一段落したら、
単語に順序を想定して、番号を振っていく。
これ、やってみようかな。



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